「ごきげんよう」 「ごきげんよう」 風薫る春。 ここは少女たちの憧れの的、「私立ヴァンセンヌ女学園」。 緑に包まれた小路を、Filles De La Vincennes(ヴァンセンヌの乙女たち)が 身のこなしも優雅に歩いています。 今日は始業式。 「た、た、た、たいへんです」 一人の少女が、息せき切って走ってきました。 周囲は眉をひそめます。 そんな振る舞いは、ここヴァンセンヌにあっては、御法度です。 ところが──。 続いた発言に、周りもみな、ハチの巣をつついたような騒ぎとなってしまいました。 「男の人が、中に、います!」 |
風薫る春。 今日は新しい学年が始まる日。 ここヴァンセンヌでは、百を超える春がめぐり、今年もまた、 去年までと同じ春がめぐってくるはずでした。 そこに投じられた、大きな一石が── 「さ、正也さん、行きましょう」 「あ……うん」 「寝癖がついていてよ」 「…………」 「くすっ……初めて見たわ、そんなの」 この物語の主人公、小此木正也クンなのでした。 |
3月のある寒い夜のこと。 グータラな父親のせいで、膨大な借金を負わされた主人公は、 行くあてもなく街をさまよっていた。 そのとき、数人の怪しげな人物に絡まれている少女を見かける。 それが、瓏仙院理瀬との運命的な出会いだった。 主人公は危ういところで撃退し、理瀬を守りきる。 |
そんなことから理瀬は主人公のことを見所のある男子と判断し、 とある計画を話してくる。 その計画とは、街でも有名なお嬢様学校“私立ヴァンセンヌ女学園”に、 留学してくれないか──というものだった。 ヴァンセンヌ女学園の理事会は、“男女共学化”の方針をめぐって、 まっぷたつに割れているという。 論争は長年続き、もはや事態の収拾は不可能と見た理事長(理瀬の祖母)は、 サンプルとして一人の男子生徒に“留学”してもらい、それをもって 共学化の是非を判断することにした。 そのサンプルとして認められた主人公は、ヴァンセンヌに入ることにするのだが……。 |
ヴァンセンヌには、“白百合会”と“紅薔薇会”という二つのグループがある。 理瀬は白百合会のリーダーであり、共学に向けて活動していこうとするのだが、 会の役員はそれに反発して、全員が辞めてしまう。 理事会では意見が二分されていても、生徒たちの九割九分は共学に反対だった。 入って早々、先行きの怪しさを感じる主人公。加えて理瀬は主人公に対し、 一つ、隠し事をしていた。 それは、留学を続けるには、一つの条件がある──ということ。 その条件とは、選挙だった。 1学期の最後、主人公の存在の是非を問う投票が、全校生徒の手で行われる。 その選挙で勝利しなければ、主人公は1学期終了の時点で、 放校処分となってしまうのだった。 |
はたして、女子校にたった一人の男子である主人公は、 生粋のお嬢様──Filles de la Vincennes(ヴァンセンヌの乙女たち)に 受け入れられるのか!? |